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          徒然なるままに
コロナとともに生きる

今年は、コロナが世界中に広がり、世の中は激変した。当初、ここまで広がり、こんなに経済ダメージを受けるとは、私は予想できなかった。少し甘く考えていた気がする。春には世界中の移動が自粛され、飛行機が飛ばなくなり、街から人が消えてしまった。現在は、Go To トラベルにより、観光地に人込みが戻り、過去最大の感染者数を更新している。
この間、「テレワーク」「オンライン〇〇」「遠隔操作」など、すごい速さで人は対応したように思う。もし、コロナがなければ、こんなに早く、オンライン化やテレワークに対応できなかったろうと思う時がある。今、会議やイベントの多くはオンラインで開催され、私自身も随分と運営のノウハウを学んだ。ただ、オンラインのイベントや会議は、ネット環境や、参加者の使うPCの性能により、すべてがスムーズにいくわけでもなく、オンサイトのイベントに比べ、10倍の神経を使う。一方で、良いこともあった。遠くの人が気軽に参加できるため、参加者が増えたことだ。今までは旅費がかかるため、参加をためらった人にとってはとても良いやり方だと思う。しかし、国際会議のオンライン化は、日本時間の夜中に参加しないといけないので、なかなかつらいものがある。しかも、海外でやっていればなんとなく解放感もあるが、PCの中では海外の景色も見られず、本当につまらない。
これからの世の中、しばらくコロナとともに生きていくことになるのだろう。第3波、第4波と、感染者は増えたり減ったりしながら続いていくのだろう。その中で、研究者達は、「富岳」を使ってシミュレーションにより飛散経路を正確に計算したり、ワクチンを開発したり、遠隔操作ができる装置を開発したり、コロナとともにたくましく生きるための準備をしている。また、医療従事者の方達は、今まで以上に神経を使い、コロナ患者に接してくださっている。感謝するばかりである。
では、私に何ができるのだろう?今まで以上に学生の心のケアをしながら、社会の第一線で頑張れるように、やる気スイッチを押すことだろうか?コロナに負けないように頑張らねばと思う日々である。

2020年11月30日


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なぜ女性管理職は工学分野で増えにくいのか?


しばらくご無沙汰していたが、今日は、このテーマで考えてみたい。

企業の方から「女性は管理職をやりたがらない」と耳にすることが多い。先月、ある企業の女性技術者の方たちと懇談会をしたところ、「管理職より自分の専門を生かした仕事がしたい」という意見が聞かれた。
そこで、女性管理職が増えない理由を私なりに考えてみた。

1. 管理職になると、仕事量や出張が増え、家族を犠牲にしてしまうのではないかと不安。
2. 管理職として自分に能力があるかの不安。
3. 男性の部下が気持ちよく認め、仕事をしてくれるか不安。
4. 女性管理職を公平に評価し、認めてくれるか不安。
5. ほかの女性の目が気になる不安。

ほかにもあると思うが、まずは順に分析をしたい。
1は大規模なアンケート結果からも出てくる意見であるが、家族がある場合、夫や祖父母の協力が得られないと、出張や残業はむずかしい。もちろん男性の家事の協力は必要であるが、同世代なら男性も忙しい時期であるので、頼ることはなかなかむずかしいだろう。
対策:本気で女性管理職を増やしたいなら、出張や仕事量を増やさず、純粋に成果主義にするべきである。管理職だって、在宅勤務も効果的に使い、マネージメント能力があれば、よい企画をし、的確に指示を部下に出すことができる。ただし、マネージメント能力があることを前提として書いている。

ではその能力に不安がある場合の2を考えてみる。
対策:管理職になるための人材育成を早い段階でするべきだろう。だれだって、経験が積み重なって優れた管理職になっていくものだと思う。私自身もいろいろな経験をいただき、そのたびに年配の先生方に育てられ、今がある。人を育てる気持ちをもっていただきたい。「やっぱり女は甘いよな。」とか、「だから女は使えない」とか言う前に、女性はまじめでやる気はあるのですよ。しっかり指導してください。必ず伸びますから。

せっかく育ててもらっても、管理職としてさらに成長するには、公平な評価や、周りの人の協力が不可欠である。そこで次に3〜5について考えてみよう。
3〜5は風土や思い込みによる偏見(アンコンシャスバイアス)が邪魔をしている場合は多いと考えている。
まず風土から分析する。風土とは、育ってきた地域や環境にも影響を受ける。日本で女性管理職が多い県をご存知だろうか?徳島県が筆頭にあがってくる。「阿波おんな」として女性管理職、女性社長比率、審議会比率など全国1位である。また男性育児参加率も全国1位である。すばらしい!!大学進学率も男子学生より女子学生が上回っている県のひとつである。女性が昔から働く県として福井県が「福井県モデル」としてあげられるが、しかし福井では女性管理職はそれほど多くない。福井県は、女性が前に出ることをよく思わない風土がある。私は福井県出身でありこの風土をずっと幼い頃より感じてきた。風土を変えるのは並大抵ではないが、これからの日本社会で人口減少を考えると、そんな悠長なことを言っている場合ではないだろう。

次に思い込み(偏見)について分析する。“アンコンシャスバイアスチェック”というのがHPであるので一度やってみると良いと思う。ものすごい偏見の塊であることに気がつくだろう。私のものすごい思い込みを一つ紹介する。
福井(鯖江市)では、地形状、東側には海はない。このため、「太陽は東の山から昇り、海に沈む」のである。大学生になり豊橋に来て「太陽が西側の海に沈んだあとに、東側の海から大きくて赤い満月が昇った」のを見たとき、何事が起こったのかと、ものすごく驚いた。豊橋人には当たり前のことが、鯖江市から来た私には「海から太陽や月が昇る」ことを容易に理解できなかったのである。ものすごくばかげた思い込みである。人間とは住んできたところの風土が常識化し、なかなか理解できない=これが風土からくるやっかいな思い込みの正体なのだ。このような思い込みが産みだすものは、「ゆがみ」「判断力のミス」=「組織の疲弊」である。女とか男とか性別で区別(差別)せず、公平な目を持ってほしい。もし偏見に気づいた時には、謙虚な気持ちで直していこう。

女性の管理職への道は、「人材育成」「環境整備」「偏見をなくす」これが3本の柱だと考える。工学分野でやる気のある女性をしっかりと育成し、環境を整え、組織を活性化してほしいと切に願い、筆を置くことにする。

2019年8月28日
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働き方改革への期待と不安

今回は、働き方改革について考えてみたい。

日本は長時間労働が慢性化し、仕事が終わっていても早く帰ることにできにくい社会になっているところがいまだにあるのではないだろうか?
理由は
1. 仕事量が多く、このため労働時間を減らすと仕事が終わらない。
2. 早く帰ると、さぼっているか、または仕事ができない人のように思われる。
3. 給料が安く、残業手当が必要であり、そのために残業をする。
4. 朝は仕事の効率が上がらず、つい長い時間会社にいてしまう。
5. 男性が早く帰ると、家族に家事、育児を押し付けられそうだから会社にいる。

この事例では、1以外は、本来は仕事を効率よく切り上げて帰ることができる事例である。実際に、日本の労働生産性は、OECD加盟国の平均値よりもかなり低いことがデータとして示されている。仕事を効率よく切り上げて、ライフをもっと充実させることはできるような気がする。

一方、スウェーデンでは6時間労働のスタンダード化が、一部の企業で取り入れられている。さて、その結果がもたらすものは、
1.ストレスの低減
2.仕事の高効率の工夫
3.離職率の低下
4.スキルアップ
5.家庭の時間の充実
すばらしい!ただし、看護や医療関係で人手が必要な箇所は、新たに人材を確保したため、コストアップになっているところもあるらしい。それでもストレスが軽減されて医療費が減り、新たな雇用で失業率も減った分を考えると多いに評価できると思う。

6歳未満児のいる夫の家事育児時間のデータがある。そこにはスウェーデンやフィンランドの夫が家事に費やす時間の平均値が3時間を超え、育児時間に費やす時間は1時間を超えている。夫が家事・育児をするのが当たり前の国では、夫婦そろって早く家に帰り、家族の時間を大事にしていることが良くわかるデータである。日本の夫は、家事に1時間、育児に費やす時間は40分であり、最も短い時間しか関わっていない。

では、どうしたらもっとライフに時間を割くことができるのだろう?
1. 無駄な作業(プロセス)や会議をできるだけ省く。
2. 利益が上がるような商品(サービス)を考え、利益率を上げ、残業しなくてもよい給与体系にする。
3. マンパワーを上げるような人材育成研修をする。

最近、働き方改革で業績を伸ばしている企業は、就活中の学生に人気があるらしい。そのうち、日本もススウェーデン並みに、6時間労働がスタンダードになる日が来るのだろうか?そうなるためには、生活スタイルから見直す必要があるかもしれない。
「そんなに早く帰って何をすればいいの?」というぼやきが出ないようなライフスタイルにしたいものだ。

                                       2017年8月
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低学年からのダイバーシティ教育

今回は、低学年からのダイバーシティ教育の導入の提案をしたい。

私が中学生の頃は、男子は「技術」女子は「家庭」と、別々の部屋で授業が行われ、男子が技術工作でものづくりをしている間、女子は調理室で味噌汁を作っていた。この影響は大きく、「男子厨房に入らず」という思想を持ち、そのせいで結婚しても台所に立たない男性が、50代~60台には比較的多いのではないだろうか。平成5年になり、中学校家庭科の男女必須が実施され、今の若者は、迷うことなく厨房に入り、「料理上手」の芸能人に触発され、私の息子は、私が一度もつくったことのない、手間のかかるお菓子まで、インターネットで調べて作っていた。
アメリカの保育園に息子を1か月間だけ預けたことがあり、その時日本とアメリカの教育の違いを感じたことを少し紹介したい。その月の保育園のスローガンが「NOと言える人になろう」だった。つまり小さい頃から「人の意見に流されるな」ということなのだろうか。保育園に慣れるまで様子を見に行ったときのことである。おやつの時間に、手作りピザが、保護者からプレゼントされ、配られていたのだが、息子に先生が「欲しいか?」と聞くと、息子は英語が分からないので首を横に振ってしまった。そうすると先生は「OK.」と言って、息子のお皿にはピザを配らなかったのである。息子は理由が分からず悲しそうな顔をしていた。日本なら、まずはみんなに配り、「協調性」を重視し、「わがまま」は極力控えるように教育をするところだろう。しかし、アメリカは多様な人種がおり、宗教上の問題などあるので、「個性」を大事にするのだろうと感じ、息子には「英語が分からないときには首を縦に振っておくように」と言い聞かせた。また、次の日には、「フェイスペインティング」があり、「やりたい人は表に出て」と先生が言ったのだが、理解できない息子は部屋に残っていた。そのときも先生は「OK。部屋で自分のやりたいことやりなさい」と。日本なら、まずはみんなで外に出て、一度はやってみようと誘うところである。その時は、日本人の女子が助け船を出してくれ、無事参加できた。小さい時から「自己主張」を重んじ、「自分の考えで行動させる」ということを教育しているように思えた。だからアメリカ人は「YSE or  NO」であり、日本人は「グレーゾーン(あいまい)」が多いのかもしれないと思った。なぜなら、日本では、小さい時から、「みんなといっしょに」「足並みそろえて」「協調性と団体力」を、しっかり身につけさせられたような気がする。
ここから見えてくるのは、低学年時代の教育が及ぼす影響の大きさである。これからの時代、グローバル化が進み、人口減少社会に対応するため、多様な人が活躍する時代になる。そのためには、「トーレランス(寛容度)」を持ち、いろんな個性を適材適所で活かすことのできるリーダーが必要になる。また個人は、「個人の強み(個人力)」を身につけ、課題を乗り切る力を持たなくてはいけない。少しずつ、対応すべき範囲が大きくなっているように思える。
日本は第4次男女共同参画基本計画がはじまり、女性活躍推進法も制定し、一見進んでいるようには見えるが、ジェンダーギャップ指数2016年は144か国中111位で2015年より順位を落としている。低学年から、「ダイバーシティ教育」を導入し、グローバル時代に対応できる、偏見のない心豊かな若者を教育するべきではないだろうか?


                                    2017年3月


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女性研究者の出産・育児と任期付きの壁

少し扱いにくいテーマをあえて書いてみることにする。

女性研究者は、ストレートに進学すると27歳で博士後期課程を修了し、その後大学や研究機関に就職して研究を続ける。しかし、若手の場合、大半が任期付きポストであるのが現状である。
国立大学では、教授以外は任期付きという大学や機関も増えており、ちょうど女性が結婚、出産、育児期間が、この任期付き期間に相当する。そうすると何が起こるのか?以下の5項目が考えられる。数字が大きくなるほど、出産・育児をしながら研究を継続できるパターンである。
1. 研究職を途中で断念し、専業主婦になる。
2. 結婚や出産をあきらめる。
3. パーマネント職の機関または企業に転職をする。
4. 研究の時間を減らしても良いようなテーマに変更する。
5. 親に手伝いに来てもらって、現状を続ける。

優秀な女性が途中で研究を断念しないといけない環境は、ぜひ改善しないといけない。
ポストが落ち着くまで出産をあきらめる研究者もいるかもしれないが、出産はいつまでもできるわけではなく、できるなら高齢出産は避けたい。ライフイベント(出産・育児)中は、自分のスキルを磨き、良い論文を一本でも多く書き、次に来る機会のためにじっくり実力をつける期間だと思う。しかし、この期間に任期付きポストだった場合、じっくり腰を落ち着けて研究がはたしてできるのだろうか?学会に行って顔を売り、次のポスト探しをする時間が必要になる。さらには、早く結果が出て、早く論文が書けるような研究テーマを選ぶことにつながらないだろうか?
とくに工学分野で、中でもものづくりを支えてきた材料工学分野において、この現状は果たして好ましいと言えるだろうか?
どのような策が、実質的に効果があるかわからないが、少し考えを書きたい。
国立大学で、しかも工学分野において、本気で若手の女性研究者を増やすなら、ライフイベントに対する任期延長と、さらにはその期間中の業績配慮をするべきだと考える。そうしないと、優秀な女性研究者が育たない上に、パーマネント職の企業や私立大学に流出することが予想される。
別の観点からの提案であるが、一旦子育てが一段落した40代以降の女性研究者を復職させるための支援策が、女性研究者を増やすためには効果的かもしれない。優秀な女性研究者が、子育てのために専業主婦になった場合、もう一度復職することを望んでいる女性も多い。ライフイベント後に研究職に復帰したい女性研究者にとって、公募時の年齢制限の排除、さらには研究助成金の年齢制限の排除は、応募しやすい条件となる。
また、任期付き女性研究者が、次の職を得やすいような、女性研究者・技術者ネットワークを作り、効率よい人事交流も望まれる。先日TVで、地銀人材バンクというのが放映されており、転勤でご主人についていく女性銀行員が、転居先の地方銀行で働けるようになった事例が紹介されていた。すばらしい取り組みであり、優秀な女性の活躍が、環境やシステムの改善で維持できる好事例である。

これからの女性研究者のために、ライフイベントをあきらめることなく、じっくり腰を据えて研究が継続できる環境について、「任期付の壁」も含め、真剣に考え、対策を講じるべきだと思う。

                                    2017年2月


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女性が仕事を継続するために

 アンケート結果では、1位は「家庭と仕事の両立」である。
ライフとワークのバランスを取るための取り組みを本気でやらないと、
女性は安心して結婚、出産、育児をしながら仕事を継続することはできない。
このことは、今や誰もが周知している。
 少し海外に目を向けてみると、中国や東南アジアでは
女性が男性と同等に活躍している。育児について
数人の研究者に聞いたところ、子供が小さい間は子供を祖母に預け
子供と離れて生活をする人が結構多いのだそうだ。
日本では、3歳までは母親が育てることを良しとする風土があり、この
ようなことはマネできないように思う。そこで、保育所の整備をしっかりする必要が
ある。しかし、いまだに待機児童問題があり、新規保育園建設には
難航している現状もある。
 フィンランドで2016年に調査をしたところ、フィンランドは保育所が整備され、朝食まで
提供してくれるようだ。また、17時までの効率の良い、残業をしない労働環境が
国策として徹底している。このため、男性の家事に関わる時間が長く、
女性だけに家事・育児の負荷がかからない。男性も女性も家庭と
仕事のバランスの良い生活ができる。そうすると、女性が安心して
出産・育児ができ、出生率も高い値を示している。
 日本では長時間労働が問題になっているが、本気で「働き方改革」が
進むことを期待する。長時間労働を仕方ないとする風土の変革、
残業をしなくてもよい給与体系、ワークシェアリングの活用、効率の良い業務システム、
会議時間の短縮やTV会議の活用、短時間労働化の評価制度など。
職場環境が良くなれば、女性が仕事を継続し、管理職に進む女性も増えるだろう。
結果として、女性らによる多様な視点との融合により、
企業も社会全体もますます活性化が期待できる。
 世の中がやや急ぎ過ぎると感じるのは私だけなのだろうか。
                                     2017年1月